年々減るレンコン農家。それでも農地を広げる水谷さんのこだわり

本記事は、愛知県の水谷グルッポの水谷さんによるレンコン栽培への取り組みを紹介します。

水谷グルッポさん本人 (1).jpg

株式会社水谷グルッポ 
水谷真也さん

家族経営で農家を営んでいる株式会社水谷グルッポの水谷真也さん。
地元のJAに勤務された後、専業農家だったご家族のあとを継いで9年目になります。
「しんどい」レンコン農家をあきらめる方が多い中、水谷さんは農地を広げており、現在12町(東京ドーム約2個分)もの農地を管理しています。
挑戦を続ける水谷さんのこだわりとは何なのでしょうか。愛知県愛西市に赴き、その考え方をお伺いしました。

水谷さんのレンコン

水谷さんのレンコンは「備中」という品種です。レンコンというと、つい市販で売っているようなシャキシャキ感のあるものを想像してしまいますが、ひと味違います。水谷さんのレンコンはもっちり、ホクホク感のあるレンコンなのです。実際に食べてみると繊維質な感じはなく、甘くてやわらかいレンコンでした。とても新鮮なもので、味付けもごま油・醤油・お酢をあえたシンプルもので十二分においしさを味わえました。
実際のレビューを見ていても、好評の水谷さんのレンコン。レビューの中にはこの食感のレンコンを求めて10年以上探し続けていたお客様もいらっしゃったほどです。

ただこの「備中」、品種的には繊維が多くシャキシャキ感が強いものだといいます。このもっちり感はどこから来ているのでしょうか?
答えは「掘り方」だという水谷さん。レンコンには水堀とくわ掘りがあり、水谷さんは愛知の伝統的な掘り方であるくわ掘りで行っています。くわ掘りはくわで土からレンコンを掘り起こすやり方で、土の自然の冷蔵庫ができることからレンコンにもっちり感が出るそうなのです。

「水堀」:ひざの少し上まで水を張った田んぼで、ホースから水を出しながら水圧でれんこんを掘る収穫方法
「くわ掘り」:水を抜いた田んぼの中に入り、くわで掘っていく収穫方法 くわ掘りは伝統的な愛知の収穫方法

土付きレンコン (1).jpg

ただ、今は水堀がメジャーになっています。一方、くわ掘りは量があまりとれず、大変ということで毛嫌いする人も少なくはありません。そんな中で水谷さんは「宝探しをしている感覚」とくわ掘りを行っていました。

作業姿 (1).jpg

肥料づくりへのこだわり

水谷さんのこだわりは肥料にもあります。もともとレンコンは肥料をたくさん入れないといけない作物で、専業農家を続けていたご家族は、教科書道通りの肥料づくりを行っていたそうです。ただ、その肥料は300坪で7万円!水谷さんの12町の広さで考えるとものすごい額になります。しかも、さらに調べていくと7万円分の肥料は”入れすぎ”ということが分かったそうなのです。

その事実がきっかけで肥料にこだわるようになり、現在では成分が低く、土に優しい有機質肥料を使用しているそうです。
そのこだわりの肥料には植物性の発酵肥料とココアの殻を使用した肥料が使用されているのですが、今年も改良を予定しているのだとか。

「肥料は人の考え方によるので正解はないです。」と水谷さん。

インタビュー時 (1).jpg

「成分が低い肥料は土には優しいんですけど小さいれんこんしか育たないんです。だから、バランスが難しいですね。」

今年も改良予定の肥料は魚由来の肥料を試そうと考えているそうです。答えがないものだからこそ、自分の納得いくものを毎年考えていらっしゃいました。

なぜ土地を広げ続けているのか

レンコンにこだわりをもって育てている水谷さんですが、東京ドーム約2個分もの広大な土地まで広げていったのは、年々減るレンコン農家の存在を水谷さん自身が肌で感じていたからでした。もともと愛知県はレンコンの産地で、生産量が3位だった時期もありますが、今は4位に下がってしまっています。

「今、米になっているような土地はもともとはレンコンだったんです。でも、レンコン堀りはしんどいという理由でどんどん辞めていって今のような状況になっています。」

広大な土地 (1).jpg

レンコン堀りは機械への代替が難しく、広い土地を管理しようとすればするほど体力が必要になってきます。
しかし、そんな状況の中、水谷さんが土地を広げ続けるのは理由がありました。

「個人的な気持ちになってしまうのですが、単純に放棄地になっていくのがいやだという気持ちからですかね。
代々受け継いできた土地を放棄して、守ってきた土地が荒れていくのがいやだと思って広げています。
ただ、広げすぎて管理が大変になっています(笑)」

だからこそ、「応援してくれる人を大事にしたい。」と水谷さんは話します。

大変なくわ掘りを「宝探し」と捉えたり、「応援してくれる人を大事にしたい。」と話してくださったりする前向きな水谷さんの人柄こそが、おいしいレンコンの秘訣だと感じました。

水谷さんこだわりのレンコンは現在も発売中です。(2022年1月13日現在)
まだ食べたことがないという方は一度お試ししてみてはいかがですか。

_____

株式会社水谷グルッポ
出品者さんのページ

_____

訪問レポート
vol.1:転機は"色"への着目。ポップに心くすぐる、カラフルじゃがいもで繋がる輪
vol.2:河辺に流れる思い。大好きな町を元気にしたい
vol.3:おいしいを追求する父子の『作品』づくり
vol.4:”直接”届けたい!瀬戸内の幸と思いを箱一杯に詰め込んで
vol.5:農業は私がやりたいからやっている。向き合う中で見つけた答え
vol.6:そこには理由がある。『人』との繋がりが生む奇跡