農業は私がやりたいからやっている。向き合う中で見つけた答え

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Nakayama Farm KASAKOYA
中山菜穂さん

みずみずしくジューシー。程よい酸味があり、形は綺麗な円錐型。果肉は白色で、甘味がとても強い。ツヤツヤと輝くいちごを、筆者も一粒頂きパクリ。

口いっぱいに広がるあまみ!う~ん。こんなにも美味しいいちごは食べたことがない…!

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「お客さんに美味しいものを送りたいので収穫の度に食べています。食べてみたら、今はこの成分が足りていないな?って大体は分かるので、すぐに調整をします。」

日中のハウスの温度、肥料、炭酸ガスの量。味の違いを生む様々な要因に細かな調整を重ね、とっておきのいちごが出来上がります。

こだわりのキンド酵素栽培いちごを栽培するのは佐賀県みやき町の農家、中山菜穂さん。さがほのかと言えば佐賀県が誇るブランド品種。

「元気な土で育てる事がこだわりです。」

キンド酵素とは124種類の微生物が入った資材。土壌にキンド酵素やたい肥、米ぬか等を混ぜ合わせることで土の中の微生物を元気にして、土の中に新たな栄養を作り出します。これを、作物に充分に吸収させることで、よりよい農作物ができるそう。

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キンド酵素をメインにたい肥や米ぬか、有機ペレット、糠を混ぜ合わせた最良の土をつくり、その土を元に作り上げたのが『キンド酵素栽培さがほのか』です。

農家、研究者、母。3つの顔をもつ

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菜穂さんは農業の傍ら、病院での脳研究の仕事に取り組む『兼業農家』。そしてなんと、家に帰れば2人の子を育てる母。

一体全体どんな時間の使い方をしているのだろうか…。筆者が絶句していると、私の時間の使い方は異常だと思います(笑)と一言。

「研究の解析作業は家でできることもあるので、日中は農業の仕事をし、夜は家でもう一つの仕事をやっています。割合は8が農家の仕事で2が研究職。だんだんと農家がメインになっていきました。」

いちご栽培との出会い

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ご両親が農業を営み、メロン、キャベツ、葉物野菜を栽培する農家の家庭に生まれた菜穂さん。幼い頃から身近に農業がある環境で育ったからか、大学に進学する頃には常に農業への思いがあったそう。

「自分が学んで両親に何かアドバイスができれば、そう思っていました。」

九州大学の農学部に入学した菜穂さんは、大学院の修士過程まで学び、農業資材メーカーの開発職に就職することを決めます。

「実家の農場は兄が継いだんです。農業は体を使う仕事。農家の方たちが少しでも楽になればという思いがありました。」

この選択がいちご栽培と菜穂さんを引き合わせます。

答えのない疑問

「就職した農業資材メーカーでは、化学肥料の開発をしていました。開発をする上で、いちご、トマトを実験台として小さなハウスで育てていたんです。

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開発していた肥料は適度なパワーで長く効くタイプのため、栽培中に効果が切れることが無く、安定した栽培ができます。でも、ある程度形になって農家さんに持っていくと『いくら水だけで栽培できると言っても化学肥料じゃあねぇ。』という声もチラホラ。農業の栽培現場の求めているものと、メーカー自身が調達できる材料で開発するもののギャップを感じました。

化学肥料が成分的に一番安定しているから長期持続タイプの肥料ができるのですが、そこを否定されると何を目指して開発したらいいのかわからないし、そもそも何をもって良いいちごなのかもわからない。農業現場の意見をアレンジして開発できればよかったのですが、結婚して退職することになり『なにを持って良いいちごなのか』の答えを出せずにいました。

農家さんの思う良いいちごと、消費者の求める良いいちごも違う。

答えがないことにモヤモヤしつつも、この時の経験がいつかは好きな資材を使って何かを栽培してみたい、と思うきっかけとなりました。」

“農家になる”それが一番大変なことだった

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旦那様とご結婚後、菜穂さんが嫁いだ先中山家は、何かの縁かいちご農家。しかし、しばらくの間菜穂さんがいちご作りに関わることはありませんでした。

「農業はいずれ辞めるからやらんでいいと。家族に言われていました。外に働きに出て家庭教師、事務、脳研究の補助など色々な職業を経験しました。」

それでも時が経ち、お義父さんの年齢を理由に農家を辞める展開に。やるなら今しかない。決心した菜穂さんは、決意を家族に伝えました。

「返ってきたのは『お前にはできん。』という言葉。何度かけあっても、認めてもらうことができませんでした。」

家族全員が反対意見。味方は誰もいないといっても過言ではない状態であったそう。

いつもなら争いごとを避け、人の意見を尊重する性格の菜穂さん。でもこの時は違いました。

「いつかやりたいでは、いつまで経っても変わらない。病院での仕事の割合を減らしながら、農家の作業を手伝う時間を増やしていくという戦略的な方法で粘り続け、家族全員の反対を押し切る形で畑を継ぐこととなりました。」

困難は改善を繰り返して乗り越える

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「今ではお義父さんから『あなたは私の50年をたった数年で超えていった』と認めてもらえるようになりました。」

2019年頃からは、収穫量も売上もお義父さまがいちご農家をされていた頃の倍以上になり、順調にいちご農家の道を歩んできたように見える菜穂さん。もちろんこの結果に至るまでには様々な過程があったそう。

「結果だけ見たらうまくいっているようですが、実はいろんな困難にぶち当たって原因を探して1つずつ解決して進んでます。

1作目は紅ほっぺを栽培するいちご農家さんに教えてもらい栽培をしてみたら、味は美味しいけど、収穫量が少ない。これまでで一番最低の収穫量になってしまいました。いちごの品種が違うことで電照(電灯照明を利用し成長の促進や抑制を行い、収穫期をコントロールする栽培方法)や肥料などの反応が違っていたんです。

2作目は収穫量もある程度確保するように、肥料管理、温度管理を目標にいちご栽培に取り組みました。1作目の時に教えていただいたいちご農家さんから、さらに若手で年も近いいちご農家さんを紹介していただき、分からないことを教わりながら栽培するようにしました。

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3作目からは苗づくりも自分で行うようになりました。いちごの苗は通常であれば自分で栽培するものですが、お義父さんは苗作りを他のいちご農家さんに依頼していました。

この年、苗を依頼していたいちご農家さんが体調不良で苗を作れなくなってしまったことをきっかけに『もうウチのいちご作りも潮時かな』と、再び家族からいちご作りをやめるように説得されるようになったんです。これを機に私は、苗床づくりからはじめました。

いろんな方に聞きながら作ったらなんとか苗が出来て、結果的に過去最高の収穫量をあげることができました。」

先の分からない中、これまでの培った経験と行動から得た知識を活かし、自らのできるやる方でやりながら学んでいく。当時の状況の中にいた菜穂さんにしか分からない、私たちの想像し難い数の試行錯誤があったのではないかと想像します。

果敢に挑戦し、困難に打ち勝っていく原動力はどこにあるのでしょうか。

「んー…。分かんないです(笑)できないのは当たり前なのでやろうかなと思いました。最初からうまく行くと落とし穴がある、けれど物事がうまく行くときってその前に波風があるものだから。これは良い波風だから耐えようと思いました。

苗床のパイプの組み立てや苗床で使う潅水配管、潅水タイマーの配線は農業資材メーカーにいたときに自分でやっていたことなんです。あの時の、女の子だから…という配慮は皆無のスパルタ上司のおかげで、何でも自分でできるようになりました(笑)」

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「でもやっぱり1番は私がやりたいからやっている、ということです。」

辿り着いた答え

農業資材メーカーでの開発職時代に直面した「良いいちごとは何か」という疑問。今は農家として。立場は違えど、この疑問が菜穂さんの中での大きなテーマとなっていました。

「アウルさんでいちごの販売を始めて、ごちそうさまレポートをよくいただきます。『こんなにおいしいいちごは初めてです。』という言葉や『生産者の人柄がよい。』という言葉が印象的でした。」

Screenshot_2021-03-25 Nakayama Farm KASAKOYAのご紹介 OWL(アウル)農家から直接野菜などの食材を購入できる産地直送の宅配通販サイト.png

「『良いいちご』とは美味しいいちごであることはもちろんですが、それだけとは限らないんだと思いました。生産者の人柄を含めて、購入してくれた方が食べたときに幸せを感じるいちごが『良いいちご』なんだと気づいたんです。OWLさんでこの言葉を頂いて、長年考えてきた答えが分かったような気がしました。」

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OWLでの出来事が問いの答えとなったなんて…。
私たちスタッフにとってもこの上なく嬉しいお言葉を頂きました。

菜穂さんの試行錯誤は栽培の面のみに留まりません。青果市場・直売所への販売やふるさと納税の返礼品としての出品など、手塩にかけて栽培するいちごを広めるため、自らの手で販路を開拓されてきました。

Screenshot_2021-03-25 農家・漁師さんと繋がる『産直OWL(アウル)』👨‍🌾( owl_food_com) • Instagram写真と動画(1).png

「販売先も場所によって客層が異なります。Nakayama Farm KASAKOYAのイチゴを手にとって頂ける場所を求めて行動すると、人との繋がりが生まれました。そこから新しい道が広がることもあります。」

色々な場所に出品することでNakayama Farm KASAKOYAのいちごを知って頂きたい、そう語る菜穂さん。今後目指すものは何でしょう。

「最終的には『Nakayama Farm KASAKOYAのいちごが良い。』と言って頂ける方に直接お届けできることを目標にしています。

直接買いに来られる方が来やすいように、収穫調整場所を兼ねた販売スペースを整備したいですし、1か月に1回はNakayama Farm KASAKOYAのいちごを使ったスイーツが食べられるイベントを開催したいですね。そして新しい加工品を作って、OWLさんでいちごと一緒に販売したりしてみたいです。」

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与えられるのを待つのではなく、自ら切り開いていく。1つ1つ課題をクリアしていく姿勢と作りたいものは自分の手で作る、という強い意志。

菜穂さんの生き方そのものが詰まったいちごであると思うと、私たちも1粒1粒大切に頂きたいですし、食材を頂くことは生産者さんへの敬意を表すことでもあることを改めて気づかせて頂きました。

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…そんなことを考えながら、次はいつNakayama Farm KASAKOYAさんのいちごを頂こうかわくわくしてきてしまった筆者は、ここでこの文章を締めたいと思います。

「キンド酵素栽培いちご さがほのか」は朝に完熟で収穫したものをその日のうちに発送してお届けしています。あま~くジューシーないちごで特別な1日にしませんか?

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Nakayama Farm KASAKOYA
出品者さんのページ
Instagram @nakayama_miyaki

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訪問レポート
vol.1:転機は"色"への着目。ポップに心くすぐる、カラフルじゃがいもで繋がる輪
vol.2:河辺に流れる思い。大好きな町を元気にしたい
vol.3:おいしいを追求する父子の『作品』づくり
vol.4:”直接”届けたい!瀬戸内の幸と思いを箱一杯に詰め込んで
vol.5:そこには理由がある。『人』との繋がりが生む奇跡